刑事部屋のカレンダー解説、19日~20日
「19日 陣頭主義」
時により自ら手本を示すべし 頭回れば尻尾も回る 子供の頃、犬が自分の尻尾を追って、ぐるぐる回るのを見たことがある。通りかかった年寄りが、「頭回れば尻尾も回る」と呟いた。また、バレリーナが、あれだけ激しく回転しても目が回らないのは、身体より先に頭を回しているからだという。 長じて、純白の第二種軍装で、前線で指揮する山本海軍大将の やって見せ云って聞かせてさせてみて 褒めてやらねば人は動かじ の教歌を知り、人の動かし方、率先垂範の何たるかを学んだ。 仏道に中にも、人が重い石を運んでいる時、或いは運ぶのを嫌がる場面では、僧侶はサラリとそこへ行って、重い石を持ってやるのだという。さらに西洋では、ノーブレス・オブ・リージ(貴族の義務)と云い、人の上に立つ指導者は、それ相応に果たさなければならない社会的責任と義務があると云われている。 そして、目の前に生きた教材が登場した。それは、中東の湾岸危機に対する各国首脳の対応と勃発した湾岸戦争における軍首脳のリーダーシップぶりである。端的にはシュワルツ司令官とホーナー空軍司令官の記者会見の模様からであるが、あの間髪をいれぬ応対振りは、実戦の裏打ちがあり、噂に聞くとおり、指揮官先頭の(フォロー・ミー魂、(俺について来い)を垣間見る思いがした。 捜査幹部も、たまには自ら現場指紋の採取をしたり、取調べのヤマ場では、数分でも良いから自らが乗り出すほどの態度を示して欲しいものである。 「20日 秘密主義」 捜査とはもとより秘密のものぞかし 窓を開ければ風が吹き込む 捜査と報道との関係は、正常な敵対関係であるといわれたことがある。それは警察の捜査は、本来密行性を本旨としているので、できるだけ活動内容を報道機関に知られたくないのに対し、報道機関の側には、できるかぎり多くのことを詳細に知りたいとの欲求があり、捜査の秘密と知る権利の攻防がそう言わしめるのであろう。 私も、警察庁捜査第一課で勤務していた時、誘拐事件の報道発表の場に立ち会ったことがあるが、そのやり取りは誠に激しいもので、まさに敵対関係だなと、その感を深くしたものである。 一方、自分が第一線で、捜査第二課長をしているときは、毎日の仕事の大半は、若い記者諸君との応対である。汚職や選挙や暴力団事件のヤマ場では、官舎への夜討ち朝駆けもまた日常茶飯事である。こうして毎日顔をあわせ、意見を戦わせてくると、お互いの立場は異なっているが、いつしか社会正義をめざす同士としての雰囲気が醸成される。 従って私は、捜査と報道との関係は、基本的には良好な協力関係にあるというべきであろうと思う。ただし、捜査段階における容疑者の氏名や公判維持の決め手になるような供述や証拠、或いは犯罪経歴や写真の提供、さらにはニュースソースなどは、捜査の扉を頑として開けなかったものである。往時茫々、彼等もまた私にとっては懐かしい戦友であり、今でも人生の友として多くの方と交際を続けている。
by ilandneko
| 2007-01-13 11:53
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